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10月…ローレル・モーガン・ビルの3Fで銃の乱射事件が発生。株式ブローカーのウッドを含む11人が射殺され、5人が重傷、犯人は自殺してしまうのでした。
2年後…あの事件の前日、息子ヘンリーの誕生日を祝ったばかりの夫ヴッドを射殺された妻のセレステは、犯行に使われた銃器メーカーであるヴィックスバーグ社に責任を求め提訴を起こしていました。しかし、過去、銃器メーカーに勝訴した判例はありませんでした。
銃器メーカーは、裁判に勝つために陪審コンサルタントのフィッチ(ジーン・ハックマン)を雇います。彼は今回の陪審員候補者全てのデータを集め、心理学的、そして科学的に分析をしながら自分たちに有利な陪審員をチェックしていきます。そう、すでに戦いは始まっているのです。
一方、原告側の弁護士には、35年のベテランであるローア(ダスティン・ホフマン)が付きます。彼は裁判を通し、銃に関する法令を変更させたいと考えていました。
そんな中、フィッチのデータでも完全に網羅することのできない人物ニコラス・イースター(ジョン・キューザック)が、陪審員候補者として現れました。フィッチは当然ニコラスを拒否するように弁護士に伝えますが、彼は選別時に判事の印象を悪くし、逆に「陪審員は市民の義務であり、ゲームをしてそれを怠るような者は絞首刑だ」とまで言わしめ、その結果、ローアもフィッチも彼を陪審員として受け入れざるをえなくなるのでした。
そして審理が始まった直後…2人の弁護士のものに封書が届けられました。
そこにあったのは陪審員たちの写真と「票決、売ります」という言葉だったのです。


↓「ブログ DE ロードショー」をまとめられている映画鑑賞の記録のサイさんの記事はこちらです。
「ブログ DE ロードショー (随時記事を追加してゆきます)」
この作品は裁判モノ…と出演者だけしか予備知識がなくての鑑賞でした。
序盤から驚いたのが陪審員制度自体です。こういう陪審員が前面に出るものとしては「十二人の怒れる男」しか知らなかったので、無作為に抽出されるくらいしか知らなかったのですが、陪審員たちがこのように1人1人呼ばれ質疑応答後に選ばれること自体新鮮な驚きでした。
もっとも、その背後で彼らの情報を調べ上げて、自分たちに有利な結論を出す人間をあらかじめ決め、さらにこの選抜時点でも念入りにチェックしているところの方が衝撃は大きいですけど。(-o-;
ジーン・ハックマン演じるフィッチは、分析能力に優れており、その能力は最初に登場した車の中でもいかんなく発揮されますが、同時に冷酷な面も表されています。わずかな時間でフィッチという人物がどのような人物像であるかを判らせる良いシーンです。ここですでに掴みはバッチリだと思います。さらに彼はその後も、陪審員への分析をし、かなりの強敵であることがわかります。
対するダスティン・ホフマン演じるローアも観察力には優れているものの、穏やかな感じがあるのがフィッチと比べて対極的です。彼ら2人は水面下では戦っていても、実際に出会って話をするのは残念ながら一度だけ。しかしそのシーンでの迫力はさすがですね。
そんな2人を翻弄させるのが、ジョン・キューザック演じるニコラスとレイチェル・ワイズ演じるマーリーの2人。
と言っても凄腕のプロ(何の?)というわけでもなく、フィッチの方が格が上のように見せつつ、実は巧妙に隠された事実がやがて姿を現します。なにせ、序盤は観ている私たちをもだましてくれます。というか、彼らの行動、セリフには通常のストーリから感じるセリフと、別の角度から見たときのセリフの2面性を持っていたのです。
こういう見せ方は実に巧みだと思います。もう一度、観直すと、なるほど、この背景があるからこのセリフが言える!と考え直すことも多いです。
この作品では銃器メーカーに対する裁判が軸にはあるものの、その裁判自体に対するスポットライトは驚くほど当たっていません。と思えるほど無視されている雰囲気があります。供述をしているときも、カメラは別の裏の部分を映し出していてセリフだけになったり…ようするに、裁判自体よりも、裏で画策している人物に注意せざるを得ないのです。それでありながら、実はかなり重要な題材を取り上げているところがなんとも。(^^)
…銃器メーカーのことは、おそらく日本人には到底判りえないことなのかもしれません。
銃は凶器でありながらも、もはや日常生活と密接につながっているアメリカの場合、単に危険だからの一言では片付かないのだと思います。
残された妻が裁判に勝ったときには多額のお金を受け取ることができます。さらに今後の同じような事件で勝つことができると啓蒙することはできるでしょう。しかし、そうであっても夫は決して返ってこない。いくらお金があっても、それとは絶対に比べ物にならないものが返ってこない。
ラストのフィッチの叫びはそのことを現しているのかもしれませんが、ニコラスとマーリーがこれから育っていく子供たちを見ながら見せる表情、そしてローアの表情が素晴らしい。
裁判モノが好きというよりも、サスペンスファンにオススメの一品だと思います。
【一言いいたいコーナー】
・マーリー(レイチェル・ワイズ)が「票決、売ります」を渡してから、部屋を出るなりカツラを取っているのは早すぎでしょう。もっと人気のないところで取るべき。よくこれでばれなかったと思いますが…ただ彼女が素人であることを現すシーンの一つなのかもしれません。
・さらにバスでのジーン・ハックマンとのやり取りをおえた彼女の表情。確かに素人ですが…さいごまで観ていると、その彼女の素人さすら、巧みに計算されていたのではないかと錯覚しそう。
・ニコラスが最後に陪審員の全員に検討して欲しい事がある。と言った後、場面が変わるのですが、当然決定的なシーンだと思っていたら特になく、その言葉で漠然と「検討しよう」となっただけで、ここで全員の気持ちがまとめられたことになったようですね。ちょっと判りにくかったかも。


映画鑑賞の記録(サイさん)の「再見・ニューオーリンズ・トライアル」
そのスピードで(ケンさん)の「正義の女神 ― 『ニューオーリンズ・トライアル』」
忘却エンドロール(宵乃さん)の「映画「ニューオリンズ・トライアル」観ました」
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【関連する記事】
今回「ブログ DE ロードショー」に賛同してくださり、告知記事、鑑賞×2、レビュー、と、本当に有難うございました☆
白くじらさんのお友達にも声をかけて下さり、嬉しかったです。今回はご覧にならなくても、次回以降、また楽しみにお待ちしています☆
>ニコラスとマーリーがこれから育っていく子供たちを見ながら見せる表情、そしてローアの表情が素晴らしい。
この映画は、この一通りのシーンが、未来への明るい予感を示していてホントに良かったです。「さあ、故郷へ帰ろう」と二人が言うところ、すっごく好きです☆
一言いいたいコーナー、目の付けどころが流石って感じです☆
12月もよろしくお願いしますネ!楽しみにしてお待ちくださいね〜!
選ばれるのはロッカリアさんです。
最後に、この記事を、例の記録記事にリンクさせて頂きますので、よろしくご了解願います。
冷たい雨の日です・・・風邪などひかれませんように・・・。
すごくビックリしました(@@)
それで、こういう陪審員コーディネーターみたいな人が有能なら
もう裁判に勝ったも同然なんて、すごい世界・・・
良い弁護士はお金で買えるし、都合のいい陪審員も敏腕コーディネーターを雇えば叶なんてねぇ・・・
さすがは資本主義アメリカ★ 変なところで感心しちゃいました〜
だけど、きのう、情報自殺するはずだった。
それで陪審員密接するはずだった。
こちらこそお誘いくださり、ありがとうございました。
2度観直すような作品はあまりありませんが、それだけ伏線が多かったということでしょうか。謎が解けて、観直すと新たな発見があったりして、二度楽しめる作品でしたね。^^
あのラストシーンは素晴らしかったですね。
おっしゃられるとおり、未来への期待が込められていると思います。
リンクありがとうございます。
12月のロードショーも楽しみですね。よろしくお願いいたします。
私も、陪審員がこのように選ばれるとは思ってもいませんでした。
確かに、無作為に選ぶだけでは問題もあるのかもしれませんが、結局ここで人為的なものが介入して、裁判を有利に出来るということ自体には釈然としないものがありますね。
もちろん、判事は目の前で面談し双方同時に受け入れ、拒否を尋ねているので公平ということなのでしょうが…人間が行うものにはどうしてもどこから不公平さができてしまうんですけどね。
はじめてお邪魔します。
「一言いいたいコーナー」、いいですね〜。
レイチェル・ワイズのカツラの件は、確かにそうだと感心しました。
あれを裁判所の中でやったら、絶対怪しまれますね(笑)。
ボクなんか、髪をバサバサする仕草に見惚れて気づきませんでした。
素人であることを強調しているというよりは、
流れでつい撮ってしまった感じです。
リンクも貼っていただき、ありがとうございます。
またよろしくお願いいたします。
記事を読んでいたら再見したくなりました。
再見しないと意味がないと思うので、
今回はトラックバックは遠慮しますね(^o^)
陪審員を選ぶっていうのは『裸の銃を持つ男』にも出演していたO・J・シンプソンの事件の際に
弁護団が人種差別問題にすりかえて・・・・っていうので
なんとなく聞いたことはあります。
でもここまで徹底的に分析するってすごいですよね。
裁判の勝ち負けで莫大なお金が動くから必死なんでしょうね。
いい映画のチョイス、ありがとうございました。
なるほど、確かにあの髪をバサバサする仕草には惹かれるところがありますね。
この作品では、ちょっと仕草や言葉に大きな意味があることが多く、ときどき戻して観直しすることがありました。よくここまで伏線をはっているなーと感心してしまいます。(^^)
トラックバックありがとうございました。
それはそれは、ぜひ再見しましょう。(^^)
この裁判でも銃器メーカーが相手で、しかも負けてしまうとこれからの事例を作ってしまうこともあって、巨額のお金が動いていましたね。
負けることができないとき、人間はここまでやる!という一例でしょうか。
でも、そういう部分が今までにない面白さを出していましたね。
この映画、懐かしいですね〜。
私はジョン・キューザックがけっこう好きなので観た作品なんですが、最初の出だしからなかなか面白くて、これは当たりだ!と思った映画でした。
陪審員に選ばれたニコラスとマーリーが実は裏がある、という設定がまず面白かったです。
本当に、これは裁判ものというよりサスペンス映画として楽しめる作品でしたね。
最近、『2012』を観に行ってきたんですが、この映画ではジョン・キューザックの魅力があまり活かされていなかったように思います。
彼はやっぱり超大作の作品より、こういう小品ながらもドラマ性のある作品の方が魅力を発揮する役者さんだと感じましたね。(^^)
観られていましたか!
最初からツカミはバッチリでしたね。私もこういう世界があるんだ!と引き込まれてしまいました。
裁判自体はちょっとおざなりになっていた感はありましたね。どうしても裏で行われている事に注意がいってしまいますし…でも、そういう点から考えるとサスペンスとしては非常によくできていた作品だと思います。
「2012」もジョン・キューザックが主人公だったのですね。
この映画はスペクタクルで、この映像を見ろ!凄いだろう!というメッセージがひしひしと感じられていますからね。(^^;
一言いいたいコーナーではいつもはっとさせられます。それぞれの何気ない行動に隠された意味、伏線の数々・・・今度観る時は見逃さないようがんばりたいです!
>ニコラスとマーリーがこれから育っていく子供たちを見ながら見せる表情、そしてローアの表情が素晴らしい。
このラストはほんといいですよね〜。フィッチにも見せてやりたいくらいだけど・・・見ても彼には理解できないですかね〜?
各所に伏線が貼られているので、真相がわかった後で観ても新たな発見が出来るのは凄いと思います。
私は観るときにはメモしながら観ているので、よけいに気になるのかもしれません。(^^;
ラストは本当によかったですねぇ。
フィッチは確かに…理解するのは難しそう。
トラックバックありがとうございました。