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柳生一門に伝わる「こけ猿の壷」。その壷には百万両の在り処を記した絵図面が忍ばされていました。
そのことを知った柳生でしたが、あろうことかつい先日、江戸で婿入りをした弟、源三郎(沢村国太郎)に壷を譲っていました。さっそく使いの者を江戸に送り取り返そうとしましたが、兄弟によくある僻み根性から、源三郎は三文の値打ちもなさそうな壷を返そうとはしませんでした。
やむなく値を吊り上げた使いの者に、明らかにおかしいと問い詰めた源三郎は壷に百万両の価値があることを知ってしまいます。が、ときすでに遅く、壷は妻の手により十文で屑屋に売られてしまっていました。
やむなく源三郎は城下町に壷を探しに行くのでしたが、婿養子であった彼にとってそれは開放感のある「仕事」で、これ幸いと矢場の娘に熱を上げ始めるのでした。
一方、売られてしまった壷は、屑屋が住む長屋の住人である七兵衛(清川荘司)の息子、ちょび安(宗春太郎)の金魚の棲家とされてしまいます。
七兵衛が矢場でのゴタゴタから死んでしまったことを機に、矢場の居候で用心棒である丹下左膳(大河内傳次郎)は、女将お藤(喜代三)と共に、ちょび安に関わることになります。
こうして数奇な運命からか、壷を巡る人々は矢場へと集まることになるのでしたが…。
第7回「ブログ DE ロードショー」の推薦作品です。
選ばれたのは「忘却エンドロール」の「宵乃」さんです。
時代劇は久しぶりです。
しかも1935年…生まれていません!(^^;
しかしながら、丹下左膳の名前は知っていますし、この隻眼片腕の剣士が凄腕の達人であることも知っていましたが…この作品で登場する左膳は思っていた侍とは違っていました。ものすごく人情味があって、剣客というよりも…なんとも微笑ましいおじさんといった感じですね。(^^)
しかし、そこがまた面白い!
この作品自体、どうやら通常の丹下左膳の作品(と言ってもほとんど覚えていませんが)とは違っていて、喜劇になっているのではないでしょうか。
ストーリーは丹下左膳と源三郎、そして柳生の3サイドから描かれながら、いい感じで絡み合っています。ほとんどは丹下左膳と源三郎になっていますが、この二人が非常に面白く描かれています。
まず丹下左膳が凄く人間くさい!嫌なことは嫌ときっばり言いますが、それがまた子供が駄々を捏ねているみたい。それもこねくり回しています。しかしそこまで叫びながら、次のシーンでは結局言われていることをしていたりします。思わず吹き出しそう。このパターンが多く、すっかり人情味豊かなキャラが出来上がっているのです。
これにちょび安が加わり(これは宵乃さんの説明でもありましたが)「擬似家族が織り成すホームドラマ」となっていました。力関係も左膳が一番弱いのがもう…ツボです。(^^; 彼の困ったような顔や嬉しそうな顔、ちょび安を見守る表情がとてもよく感動してしまいます。
とまぁ、ここまで人情親父風ですが、源三郎の不知火道場での立ち回りや、ラスト近くの立ち回り(カットされているところ)などはさすがに凄腕の剣客ですね。どうしても片腕のため、特異な殺陣になっているところは必見かもしれません。
こういうギャップも観ていて面白いところです。
もう片方の主人公と言ってもいいのが源三郎です。
彼は最初こそ100万両のために動きますが、その実、婿養子の立場から逃げたいという…そのために壷を探しているようです。そのためどこかのんびりとしていたり、しかしそれがやがて最後のオチにつながっているという絶妙な位置にいました。
先が読めるところも多いのですが、それを考慮しても、役者陣の表情のよさ、小道具の演出など、楽しめる要素が詰まっている作品に仕上がっていると思います。
宵乃さん、紹介していただきありがとうございました。
【一言いいたいコーナー】
・達磨、三味線を弾くときの招き猫の向き、的の大きさ、壷など小道具の演出が光っています。
・当時の作品なので当然でしょうけど、タイトルが右から左読みで新鮮でした。(^^)
・終盤のアクションシーンがあるのですが幻のシーンとなっているようです。この部分は戦後に発見されており、DVDにも収録されていますが残念ながら音声はありませんでした。
・ちょっといろいろと調べていると原作者の林不忘側から左膳のイメージが違う云々の抗議もあったようで…やっぱり喜劇として作られてしまったのでしょうね。いわば、パロディ作品に近いのかも。
・ジャケ写では1953年になってますが…?はて、どうなっているんだろう。
・2004年「丹下左膳 百万両の壷」監督:津田豊滋、主演:豊川悦司によってリメイクされています。DVDには速報みたいな感じで収録されていましたが、映像がなくってよく判りませんでした。
忘却エンドロール(宵乃さん)の「映画「丹下左膳餘話 百萬兩の壺(たんげさぜんよわ ひゃくまんりょうのつぼ)」再見しました」
映画鑑賞の記録(miriさん)の「2−527 丹下左膳餘話 百萬兩の壺」
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早々のレヴューを有難うございました。
>達磨、三味線を弾くときの招き猫の向き、的の大きさ、壷など小道具の演出が光っています。
仰るとおりです。
私も書きませんでしたが、本当にそれらには良いなぁと思いました。
来月は「リラックスタイム」のユウ太さんが選ばれます。
こちら → http://relax371.blog95.fc2.com/
宜しかったら、またご参加くださいネ〜!
お待ちしています!
(白くじらさんにお願いする時期は7月頃になりそうです☆)
わかりやすい解説と丁寧なレビューありがとうございます。
>ストーリーは丹下左膳と源三郎、そして柳生の3サイドから描かれながら、いい感じで絡み合っています。
そうそう!わたしは左膳のことばかり書いてしまったけど、源三郎も面白かったですよね。壺のすぐそばにいるのに、気付かず矢場に入り浸ってるし。情けないところばかりだけど、オチでは意外と重要な役割だったり。ただ、美人な奥さんが可哀そうでした。
柳生も間違った方向に頑張っていて・・・あの壺の山はどうするんでしょう(笑)
おお、DVDには幻のシーンが収録されていたんですか。やっぱり、あの変わった立ち回りでした?
もっと山中監督のフィルムが見つかるといいですよね。
今回はちやんと観れたときにレビューが描けて良かったです。
やはり今のようにCGなど映像に頼った作品ではなく、脚本に拘りがあるのでしょう。小道具のちょっとした扱いがとてもうまいと思いました。
少し先が読めるのはご愛嬌ですね。(^^)
次のチョイスも楽しみですね。
私が7月ですか…んー、何にしようかな。わいわいいろんな面で語り合える作品がいいですねー。
丹下左膳も面白かったのですが、この作品は左膳独りと言うよりも彼が住んでいる江戸の人たちの生活自体が面白かったようにも思えます。
奥さん、確かに。取り立てて悪女でもなかったのですが、男性にとってみれば、いつもべったりでしかも婿養子で頭が上がらないがゆえの自由へ(憧れの)道だったのかもしれません。もっともそれでも浮気…という言葉はね。
…たの壷の山…本当にどうするんでしょうね。(^^)
よく聞く柳生にしてはまじめに集めていましたからねぇ。
DVDには、本編に挿入しているパターンと、その部分だけを抜き出したものと2つ入っていましたが、実際にはかなり短い、1分あったかなというくらいのシーンでした。
あまり変わった立ち回りではなかったような…路地裏に飛び込んだりしたので、よく判らなかったりして。(^^;;;
トラックバックありがとうございました。