|
1893年11月5日、ロンドンは切り裂きジャックの影に震え上がっていました。
H・G・ウェルズ(マルコム・マクダウェル)は発明品の発表をするために友人を集めていました。最後に訪れたスティーブンソン医師(デビッド・ワーナー)で全員が集合、ウェルズが地下室で発表したのは、雑誌に投稿していた「自由恋愛」の原稿料で作った≪タイムマシン≫。半信半疑で説明を聞くメンバー、100年後は社会主義のユートピアになっていると信じるウェルズもまた、正直マシンの動作に不安で恐怖を感じていたのです。
そんなときウェルズ邸にジャックの捜索に警官たちがやってきます。いつの間にか姿を消していたスティーブンソンの鞄から鮮血に染まった手袋を発見した警官たちは屋内を捜索しますが、彼の姿はどこにも見当たりませんでした。みんながいなくなった後、地下室に降りたウェルズはそこにあったはずの≪タイムマシン≫が消えていることに驚愕しました。続いて実体化したマシンを点検して、ウェルズはスティーブンソンが1979年11月5日に行ってしまったこと知ります。
自分のせいだと感じた彼は、家のお金と貴金属を持つと、スティーブンソンを追いかけるため未来に旅立つのでした。
1893年11月5日、8時間の時差のためサンフランシスコに到着したウェルズは、あまりの生活様式に戸惑いながらも、ロンドン銀行に勤めるエイミー(メアリー・スティーンバージェン)から、同じような風貌の英国人が両替をしたことを知ります。彼女から彼が行ったらしいホテル、ハイアット・リージェンシーへ向かうウェルズ。しかし出会いはしたものの仲たがいとなりスティーブンソンは逃げ出してしまいます。それを追うウェルズでしたが、スティーブンソンはそのまま交通事故で亡くなってしまいます。いつしかロンドン銀行へと向かうウェルズは、彼に一目ぼれをしてしまっていたエミリーと再会しデートに…。
しかし…ウェルズの知らない間にサンフランシスコで切り裂き魔の姿が…。
H・G・ウェルズのタイムマシンを扱った作品の1本ですが、1959年「タイム・マシン 80万年後の世界へ」のように単に実験、2002年「タイムマシン」と違って誰かを助けるため、というよりも自分の発明品のために、切り裂きジャックが未来へ逃げてしまったことに対する責任から未来へと移動します。
確固たる目的があるものの、やはり90年近い年月が経った未来ではかなり違っており、マクドナルドの注文、タクシーの止め方、自動ドアなど過去と未来のギャップもいろいろと盛り込まれていて面白かったです。
実際には戦争も貧困もなくなったユートピアを想像していたウェルズですが、世界大戦やベトナム戦争…争いは今も変わっておらず、切り裂きジャック自ら自分がチンピラに思えるほどだと語っているのは、強烈な反戦なのでしょう。食事や道具などがどんどん変わっても、争いだけは今も変わらず続いている。これはタイムスリップモノの中でも当然のように語られ続けられながらも、重い現実となってくるでしょう。
もともと未来へ行っていたので、過去に戻ったときのタイム・パラドックスというものはないのですが、未来で見聞きしてきたことが後の彼の執筆活動に大きな影響を与えたという流れは面白いと思います。
【最近一言じゃないなぁ…コーナー】
・今回のタイムマシンは人間もマシンも蒸気となる説明ですが、実際に移動している本人はそういう自覚はないようです。ただ、未来へ行くときにネジが取れて壊れかけていたのはどういうことだったのでしょうか。幻覚?(^^; その後の移動では問題ありませんでしたし…。
・上の疑問と重なるかもしれませんが8時間のロスが時差との説明でしたが、つまりその分地球が回ってしまったためにロンドンではなくサンフランシスコに?でもそこがちょうどH・G・ウェルズ展を催している博物館だなんて。(@@) うーん、どうもこの部分がよく判りません。
・ラストでジャックが送り込まれたのが1977年だったようですが…大丈夫なのかな?
・切り裂きジャックは1888年(作中では1893年)にロンドンを震撼させた殺人鬼です。売春婦を殺人の対象に選んでいたようですが、犯人は結局捕まっておらずその動機も正体も不明です。この作品では正体は判明していたものの、動機は不明のままでした。ラストで観念してウェルズにうなずくところから、自分を止めてくれる人を待っていたのか、少しラストには驚かされました。懐中時計の女性も誰であったのか…謎でした。
・エイミーがかなり積極的なのもびっくりしたところです。
エイミー役のメアリー・スティーンバージェンは同じタイムスリップモノの「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」にも同じような役柄で登場しており、この作品へのオマージュだと思っていましたが、彼女がウェルズのことを「カワイイ人」と形容しているところがあって、「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」でもドクを同じように形容しているところがあったことが新たな発見でした。ちなみに彼女は本当にウェルズ役のマルコム・マクダウェルと結婚しています(1990年離婚)。
・1985年「グーニーズ」、1986年「スタンド・バイ・ミー」、1989年「ロストボーイ」で有名なコリー・フェルドマンがウェルズ展でウェルズを目撃する子役でちょっとだけ出演しました。8歳くらいのときですが、子役の彼ばかり見ていますから面影がありますね。
▼ よろしければ、クリックをお願いいたします ▼
【関連する記事】
パッケージの写真がどことなく懐かしいです。
いまさらですが、いつもタイトルの下に書かれている文章は作品の宣伝文句でしょうか? 知恵のない者は暴力を使う・・・コメディだと思い込んでいたけれど、反戦のメッセージが込められた真面目なSFだったとは。やっぱり時間が経っていてまるで覚えてないや。
>彼女がウェルズのことを「カワイイ人」と形容しているところがあって、「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」でもドクを同じように形容しているところがあったことが新たな発見でした。
新たな発見って嬉しいですよね。この作品と「バック・トゥ・ザ〜」を再見する時は、これを思い出して一人ほくそ笑みたいと思います(笑)
だけど、エルネストが捜索ー!
でも、売春婦は集合しなかった?
あれから観直したくて仕方がなくって…でレンタル屋さなにはなかったのですが、DISCASにあったので、先の「コマンドー」と一緒に借りてしまいました。(^^)
タイトルの下の言葉は、宣伝文句ではありません。
作中で印象的だった言葉、説明、もしくは自分で考えて…となっています。
コメディの部分もありますが、基本まじめで、現在の社会環境や反戦に関することは多かったと思います。
きっと私もまた「バック…」を観るときにはニヤリとしそうです。(^^;
夏ばて気味で、DVDを観ていても(そして映画館でも・・・><)すぐウトウト睡魔に襲われる今日この頃、
白くじらさんはいかがお過ごしでしょうか☆
今作懐かしい〜! といっても観た事ないんですけど(^^;
上のコメントで「レンタル屋さんになかった」とありますが
私も観たくなったので今度探してみます♪
M・マクダウェルはこの水色の瞳が印象的ですねぇ・・・
こんなにきれいに薄いブルーの瞳の俳優さんって、今あんまり観ませんよねぇ?
あージョディ・フォスターがこんな感じだっけ・・・いやあれは緑かな・・・
お久しぶりですね、お元気でしたでしょうか。
私もこのところ睡魔が襲ってくることが多くって、単純なドラマなど刺激がない作品では寝てしまいそうです。
この作品はタイムスリップモノのお手本のようなところもありますから、楽しめるかと思います。ありましたら、ぜひご覧ください。
目もさることながら紳士的な物腰が気に入っています。
ときどハッとする目の美しい人はいらっしゃいますね。(^^)