製作国:フランス、イギリス、チェコ
監督:ロマン・ポランスキー
原作:チャールズ・ディケンズ
脚本:ロナルド・ハーウッド
撮影:パヴェル・エデルマン
音楽:レイチェル・ポートマン
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涙のあと、幸せはやってくる。
19世紀イギリス…孤児であるオリバー・ツイスト(バーニー・クラーク)は、教区吏バンブル(ジェレミー・スウィフト)に連れられ救貧院にやってきました。
9歳になった彼はそこで同じ孤児たちと麻をほぐす仕事を始めることになりました。粗末な食事に、箱の中で空腹に耐えながら眠る日々…ある日のことくじで負けたオリバーは、食事のときにおかわりを要求するのでしたが、とんでもないことだと、たちまち追い回され、上のモノに目を付けられるようになりました。
10歳になり葬儀屋に引き取られたオリバーは、その悲しそうな表情は葬儀の際にちょうどいいとお供の役をもらいます。しかしそのことは元からいた少年の怒りをかい、母親のことを侮辱された彼はついに喧嘩のすえ、お仕置きされることに。
朝早く、オリバーは葬儀屋を抜け出し大都会ロンドンへ向かいます。
ほとんど食料もなく、7日間も歩き続けたオリバーはやっとのことでたどり着いたものの、空腹で建物の階段に倒れるように座り込むのでした。
そんなオリバーに親切に食べものを与えたのが、ドジャー(ハリー・イーデン)でした。しかし彼は食べものや衣類を平気で盗む少年でした。
ドジャーはオリバーを彼のボスであるフェイギン(ベン・キングスレー)のもとに連れて行きました。フェイギンはオリバーに食べものを与えて休ませました。そしてオリバーに盗みのテクニックを教え始めるのでした。彼は大勢の子供たちの世話をする盗賊団の頭だったのです。
やがて…久しぶりにオリバーは街に出ました。本屋にいた老紳士からドジャーたちが盗みを働いたとき、オリバーも一緒に逃げてしまい泥棒と間違われ、街中の人に追い回され捕まってしまいます。
法廷で一方的に泥棒扱いされるオリバーは、駆け込んできた本屋の店主に人違いだと、容疑を晴らしてもらいますが、緊張と疲れからその場に倒れてしまいました。
一緒にいた老紳士ブラウンロー(エドワード・ハードウィック)は、オリバーに何かを感じたのか、看病するためにそのまま屋敷に連れて行き、まるで自分の子供のように家におくことにするのでした。
ようやく幸せが訪れたオリバー…しかしその一方、彼に余計なことを喋られては危険であると感じたフェイギンとその上の存在であるビル・サイクス(ジェイミー・フォアマン)は、オリバー奪回をたくらみ屋敷に近づこうとしていました。
まず一番最初に、鑑賞した当時のことですが、私に鑑賞券を譲ってくださった方に感謝。ありがとうございました。
これは子供の絵本にもなっている文学作品で、○○全集といった名作集には収録されている作品です。
一言で言ってしまえば、孤児の少年がいろいろな逆境の中、ついに幸せを掴む物語…となってしまうのですが、それだけで語れるというものでもありません。
この作品の舞台となっている時代には「救貧法」というものがあり、自分で生活ができない人々を救うための制度がありました。裕福な人々からの救貧税は不満を呼び、制度は次第に合理化されていきました。やがて効率化を求めた制度は、映画のシーンのように単に食料を与え、まるで監獄のように働かせるシステムになるのでした。
ここで言うオリバーの「もっとお粥をください」という名セリフは、原作者チャールズ・ディケンズの制度に対する怒りを現しているのです(もっともオリバー自身は貧乏くじなのが残念なのですが、作品の重みとしてはここにあるのでは?)。
彼が泥棒と間違われて法廷に立たされたときの判事、まるで自分が全てを知っているかのように傍若無人に振舞う彼には驚かされますが、当時このような判事は名誉職として無料で務めていた者が多く、そのためか判決もいい加減で、怒鳴っている者ばかりだったそうです。
さらにラストの絞首刑の舞台に集まる人々、まるでショー扱いです。こういうことも「反」の意味を込めてオリバーに去らせているのでしょう。
最初は名作なので、疲れているときに観ると寝るかも知れない!と懸念したのですが、とんでもありませんでした。
特にロンドンに着いてからはフェイギンとビルの存在が陰の要素として大きくオリバーに関わりだし、サスペンスものとなっていました。
フェイギンはオリバーのことを自分の息子のように感じていたのではないでしょうか、それでもビルの言葉には従わなければならない彼はその葛藤で悩んでいるように思えました。最後のシーンでは泣きそうになります。
変わってビルはもう悪そのもの、怖い存在でした。フェイギンはともかく彼から逃げるのは彼が生きている限り不可能なのではと思いました。それにしても自分の飼っている犬が問題で…というのはその前のシーン(鎖ね)とも相まってなんとも皮肉な話でした。
さて、問題の主人公オリバーくん、彼自身は純真無垢な存在として描かれてはいるのですが、あまりにも流されすぎではという感が強かったです。(^^;
もう少し自己主張が欲しかったように思えますが、10歳では仕方がなかったかもしれませんね。
でも最後の方でビルが屋根から降りようとしていたときには、先に降りているんだから走って逃げろーと考えてしまいました(おそらく原作では1行なのかも知れません。映像にするとタイムラグが発生するので)。
こういう時代にあって、オリバーの本質を見抜く老紳士ブラウンローの存在は異質でもありますが、観ていてやっとオリバーともどもほっとできる存在でもありました。人間、こういう気持ちを忘れてはならないと思います。これだけは時代を超えて守っていかなければならない人の心ですね。
そう、子供を育てるのは今の大人なのです。
肉球シネマブログ(アニーさん)の「【オリバー・ツイスト】」
【関連する記事】
この映画は見たかったのですが、見てないのですよ。
原作は読みましたが。
お薦めが付いてますね!
見よう!
欧米(特にヨーロッパ)は、日本人には想像のつきにくい階級社会ですから、貧窮の差も同じ頃の日本と比べてもひどいようですね(私が知らないだけかも知れませんが・・・)
この作品と同じ系統で「五輪の薔薇」という本があります。
(作者違います)
大河&ミステリー&成長物語、ですかね^^;
当時の英国の貧窮階層の生活が良く分かります。
むちゃくちゃ悲惨ですが・・・
(今の日本に生まれて良かったぁ!と実感します^^;)
読み応えもむちゃくちゃあります。
ダヴィンチコードもどきの謎解きもあります。
白くじらさんの記事は、いろいろなものを思い出したり、見たくなったり読みたくなったり、今流行のインスパイア(?)されるものばかりで嬉しいです^^
これからもがんばってください。
よろしくー!
私も名作ということで二の足を踏んでいたのですが、運良くチケットが手に入ったので観ることができました。
予想を裏切る出来でした。
この時代の制度はかなり厳しかったらしいですが、それとは逆に裕福な人々はあくまでも裕福であるという、あまりにも厳しい時代のようです。
主人公はこういう時代で翻弄されながら生きることになるのですが、とにかくまだ若すぎました。そのため自分の力ではほとんどなりも出来ない…このつらさが。
「五輪の薔薇」は今始めて知りました。
葉山猫さんからはこうやって文学を教えられるので、とても嬉しいです。
この前の出張では久しぶりに火星シリーズを1巻読み切ることが出来ました。(^^; こうやって出張時にはオススミ本を読んで行きたいですね。
今後ともよろしくお願いいたします。
オリバー・ツイストって私、全然知らない(笑)
原作本が有るなんて事も知らずに見ました。
で、ストーリー書とか読んで、そうなんだ〜ってレベル
凄い名作なんだと思うのですが、私的には微妙でした。
決して退屈する事は無く最後まで、集中して見た事は
確かだったので、やはり映画としても名作だったんだと
ポランスキー監督の手腕かしら?
トラバありがとうございます。
こちらからも、お願いします。
私も読んだのはずいぶん昔のことだったのでほとんど忘れていました。
今のように請った話でもなくどんでん返しがあるわけでもなく、主人公にとってはハッピーエンドに終わっているのはやはり昔の名作といったところでしょうか。
それだけだとなかなか今の世ではヒットしにくいかと思いますが、サスペンス色が強く、十分見ごたえがありましたね。
やっぱり監督の手腕なのかも知れませんねぇ。
トラックバックありがとうございました。(_ _)