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2006年08月13日

華氏451

月曜日はH・ミラー、火曜日はトルストイ…。

華氏4511966年(FAHRENHEIT 451)
製作国:イギリス、フランス
監督:フランソワ・トリュフォー
製作:ルイス・M・アレン
原作:レイ・ブラッドベリ
脚本:フランソワ・トリュフォー
撮影:ニコラス・ローグ

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ストーリー
華氏451、それは紙に火が付いて燃え出す温度のことです。
近未来、人類は全ての情報をスクリーンと呼ばれる装置によって与えられ、装置を入れていない人たちは不穏分子として目を付けられていました。
この世界ではあらゆる本を読むこと、いえ、活字そのものが禁止されていました。表現に使われているのは数値と絵のみ。本を読むことは人に危険思想を与えたり、優越感を持つことによる平等性の破壊など、人間にとって悪影響を与える必要のないものと考えられていました。

市民番号381-813モンターグ(オスカー・ウェルナー)はロディエ消防局に勤める職員でした。彼の仕事は市民がひそかに持っている本を探し出し、火炎放射器で燃やしてしまうことでした。

ある時モンターグは仕事の帰りの電車で、1人の女性に話しかけられます。
彼女の名前はフェビアン(ジュリー・クリスティ)、同じ813番地に住む教師見習いでした。彼女は彼にどうして本を燃やすのか、本を読みたいとは思わないのかをたずねますが、モンターグは仕事だから、違反になるし興味はないと答えます。

モンターグの家では妻のリンダ(ジュリー・クリスティ、二役)がスクリーンに没頭していました。スクリーンは彼女を安らかにしてくれる唯一のものなのです。
モンターグもそれは同じ、何の疑問も持たない生活をしていたのです。しかしそこに波紋を投げかけたフェビアン、彼女の言葉はいつまでも彼の頭の中にこびりついてはなれませんでした。
そしてついに本に興味を持ってしまったモンターグは、現場から一冊の本「デビッド・コパーフィールド」を持ち出し、家に持ち帰ったのです。その夜、彼はゆっくりと本を指でなぞりながら活字を読み始めました。
彼は本に書かれていること、そしてその向こうに見える人間に興味を持ち、次第に読む本が増えて行きました。

しかしそれはリンダの知ることとなり、彼はリンダに本の素晴らしさを説明しますが、彼女にはどうしても理解できませんでした。
そんな時、フェビアンの家が社会反乱分子として摘発を受けてしまいます。さらにその知り合いの家に本が隠されているという情報を受けた消防局は現場に踏み込みます。
そこでモンターグたちが見たものは…。

映画レビュー
オススメ現代では火を消す仕事の消防士、それがこの世界では皮肉なことに逆に火をつける役目を持つ人間ファイアマンとして描かれています。しかも彼らが燃やすのはいままで蓄積されてきた人類の宝とも言える書物なのです。本に関しては「タイム・マシン」でも言及されていました。
小説、哲学書、伝記などその全てが人類に悪影響をもたらすものとして拒否されています。その上でスクリーンによる平等的思想が洗脳のように刷り込まれていきます。

これは66年という古い作品ですが、まるで今世の中に蔓延っている悪書のことを予言していたかのような思いです。
こんな世界で何も疑問を思っていなかった主人公モンターグは、ふと知り合った(実は違うのですが)女性に投げかけられた言葉から本への興味が波紋のように広がっていくのです。
燃やすべき立場から守るべき立場に変わった彼の言動、そしてこの人類の知識である本を守ろうとする人たちの行動が静かながらも感動を呼びます。
Number154特にラストでの雪景色、その中で人々が歩いているシーンは、映画史上屈指の美しさと感動ではないでしょうか。

【一言いいたいコーナー】
・不思議の国のアリスなどもありましたが、中でもちょっとおちゃめだったのは同じ原作者であるレイ・ブラッドベリの「火星年代記」を記憶しようとしている人がいたこと。なんだか嬉しい。
・学校に「小さな恋のメロディー」のマーク・レスターそっくりというか本人がいたような気がするのですが、出ていたのでしょうか。

関連リンクです。
忘却エンドロール(宵乃さん)の「映画「華氏451」観た
嗚呼,魅惑の映画道+Σ(hiroさん)の「No766 華氏451 2010年120


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ラベル:映画 DVD SF
posted by 白くじら at 17:45| Comment(4) | TrackBack(1) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
一言いいたいコーナーでは、いつも「おっ」と興味を引かれることが書かれていて楽しませてもらってます。
ちゃんと原作者さんの本も暗唱していたんですね!
あまり本を読まないので(リンダと同じかも!?)、白くじらさんの記事を読まなければ一生気付かなかったと思います。

ラストシーンは本当に美しいですよね。自分のやりたい事に没頭できるという感動とともに、こんなふうにしか実現できない切なさも感じるシーンでした。
Posted by 宵乃 at 2010年04月21日 11:42
こんにちは、宵乃さん。

「一言いいたいコーナー」はまれに一言ではすまないほどツッコム場合がありますが、直接の感想以外のことを書くようにしています。気に入られたようでよかったです。

本は最近は自転車通勤なので読まないですが、昔はかなり読んでいました。ご他聞にもれず偏っていますけどね。(^^;

ラストシーンはこれからの余韻も含まれていて、記憶に残るシーンでした。
確かにこうしなければならない現実の切なさも感じますね!

トラックバックありがとうございました。
Posted by 白くじら at 2010年04月21日 18:49
これは60年代の映画ながら新鮮で面白かったです。
本来なら消火が仕事の消防が火をつけてくアイデア
が斬新かつ奇特?

ラストの雪景色は函館在住の僕にも美しく思えましたよ。
主人公が本になるエドガー・ポーの作品は読んだこと
あります。燃え盛る火の中の本のタイトルを白くじらさんは
確認なされたのですか〜?
Posted by hiro at 2010年06月06日 18:24
こんにちは、hiroさん。

消防士が火をつけるのはアイデアでしたね。斬新というか、逆転の発想なので奇抜でしょうか。

自分が知っている本があると切なくなってしまいます。
確かに悪影響を与える本もあることは事実なのですが…それを踏まえて前進するという考えは、上の人たちにはないようですね。
燃える前にもタイトルは確認できていたような気がしますけど…ラストの雪景色のときも、それに一文読むと判るのありますよね。(^^)
Posted by 白くじら at 2010年06月06日 19:13
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映画「華氏451」観た
Excerpt: 製作:イギリス/フランス’66 原題:FAHRENHEIT 451 監督:フランソワ・トリュフォー 原作:レイ・ブラッドベリ ジャンル:SFドラマ書物を...
Weblog: 忘却エンドロール
Tracked: 2010-04-21 11:32
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