![]() 製作国:アメリカ/イギリス 監督:アルフレッド・ヒッチコック 製作:ケネス・マッゴーワン 原作:ジョン・スタインベック 脚本:ジョー・スワーリング 撮影:グレン・マックウィリアムズ amazon.co.jpで詳細を見る。 |

第2次世界大戦時…突然のUボートの襲撃によって船から投げ出された人々は、1隻の救命艇に集まります。
ゆとりをもって乗り込んだジャーナリストのコニー・ポーター(タルーラ・バンクヘッド)がタバコを吸っている中、泳ぎ着く技師コバック、スパークス、そして足を負傷している水兵ガス(ウィリアム・ベンディックス)と看護士のマッケンジー、コニーの友人のリットンハウス…続いて黒人コックのジョーが赤ん坊を抱いたヒギンズ夫人を抱いて泳ぎ着きました。
そして最後に現れたのが、撃沈されたUボートの乗組員のウィリー(ウォルター・スレザック)でした。当然、突き落とすか乗せるかで意見が分かれましたが、多数決によって彼はそのまま艇に乗ることになりました。
ほかに生き残りもなく次の日…コバックの指示でバミューダへ向かうことにしたもののコンパスのない今、はっきりした進行方向も判らない状態でした。
そんな中、ガスの容態が悪くなりこのままでは死んでしまうことが判ります。
軍医であったというウィリーがガスの足を切断することになりましたが、そのことによって彼は乗組員の信頼を勝ち得ることに、彼はバミューダは別の方向だと自信たっぷりにつげ、艇は進行方向を変えるのでした。
その夜、火星の位置から違う方向へ向かっていることに気づいた彼らは、ウィリーが密かにコンパスを持っていたことに気づきます。
しかしそのことを詰問する暇もなく、突然襲い掛かってきた嵐、彼らは生き残るためにウィリーの指示で荷物や飲み水を捨てるのでしたが…。

ヒッチコック監督のサスペンス作品です。
大海を漂流する救命艇という閉鎖空間での人間性を描いた作品ですが、極限状態が描かれたかどうかと言えば少々甘い感じでした。
とくにコニーの存在が緊迫感をなくしているように思えました。「ゆとり」をもって乗り込んだと言う彼女は、最初からミンクの毛皮に包まれ余裕綽々、しかし…カメラを落とし、毛皮はヒギンズ夫人がそのまま入水、タイプライターも落とし、ほかにも貴金属が次々と…ひょっとして伏線でもあるのかと思っていたのですが、ただ1人ギャグメーカーとなっていたような気がします(暗い過去とかもあるにはあったのですが)。
もう食料や水が無くなったときの、極限の描写がもう少しあればよかったですね。
ただ、この中にあって敵兵ウィリーの存在は、かなり大きかったように思います。
彼だけはそういう状態に対して的確に対応していたようですが、そこにある生への執着はほかの人間の考えの範疇外だったのでしょう。彼に対する残されたメンバーの切れた行動は、作中もっとも恐ろしい。あまりの長さに驚きました。

ドイツ兵だということで、どんな人間も一括りにすることは、間違っているということですが、戦時中においてそれを実行する難しさが悲しさを誘います。
【一言いいたいコーナー】
・さていつも自分の作品のどこかに登場している監督ですが、今回はなんと遭難客の1人が読んでいる新聞の裏(つまりこちらを向いている方)に載っているヤセ薬の広告に登場していました。当時監督は50キロ前後のダイエットに成功していたということです。
・この作品は実際の海での撮影は行われず、スタジオのみで行われたようです。嵐のシーンなど大変だったのではないでしょうか。
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脱出する救命艇の上。
ボートと海と人しかないという状況が、逆に数々のドラマを生み出していく…。
こういう密室劇に意外に名作が多いのは、誰にも起こり得て、誰しもあまり考えたくない状況だからでしょうか?
精神的に追い詰められて理性が機能しなくなる状態、確かにある意味恐怖ですね。
おお、これもリメイクされていたんですね。
知りませんでした。
こういうその場から逃げることができない、いわゆる密室モノは好きです。
名作が多いのは、「誰にも起こり得て、誰しもあまり考えたくない状況」というのもあるでしょうね。さらに、密室のために外部要因が少なく、その分今あるもので状況を打破するために、作り手のほうも普通のオープンなものより知恵を絞ることを強いられるからかも知れません。密室状況で90分前後を飽きさせずに続けるのは並大抵なことではないでしょう。