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トランシルヴァニアの邪悪なるヴァルプルギスの夜…ボルゴ峠を望む険しき峰に隠れ、過ぎし日の古城がたたずんでいました。
馬車で村にやってきた事務弁護士の若者レンフィールド(ドワイト・フライ)は、ドラキュラ伯爵と出会うため、村人たちの声を無視しボルゴ峠へと向かいました。彼は屋敷の賃貸契約を結ぶために招かれていたのですが…。
暴風雨の中、イギリスへ向かう漁船ヴェスタ号に積まれた荷物は3つ。
ホイットビー港に漂着したものの、レンフィールドはロンドン近郊のセワード精神病院へと入れられてしまいます。
一方、ロンドンにその姿を現したドラキュラ伯爵(ベラ・ルゴシ)は、セワードの娘ミナ(ヘレン・チャンドラー)とルーシーにその魔の手を伸ばし始めます。
ミナの恋人ジョン・ハーカー(デイヴィッド・マナース)と科学者のヴァン・ヘルシング教授(エドワード・ヴァン・スローン)は、ドラキュラ伯爵の真の目的を探り、彼を追い詰めようとするのでしたが…。
古い吸血鬼モノが手に入ったので、再観しました。レビューは2006年時のものに追記/修正しました。
サイレント時代にはもっと古いものもありますが、吸血鬼モノの有名なものとしては、一番古いかもしれませんね。
オープニングで流れるのは「白鳥の湖」。このなんとも物悲しい曲は、今のドラキュラものには無い感性をうかがわせますが、これが今から始まる物語への序曲となっているのです。
日本では吸血鬼ドラキュラと言えばクリストファー・リー、ヴァン・ヘルシングといえばピーター・カッシングがすぐに出てきて、ベラ・ルゴシはあまり知られていませんが、彼もまた吸血鬼役者としては名高い存在でした。しかもこの作品での印象があまりにも強く、その後もどうしても吸血鬼のイメージを拭い去ることができなかったようです。
この作品では、吸血鬼特有の牙を剥き出して咬むシーンなどはなく、その直前まででシーンが変わりますが、そこまでの彼のアップは非常に怖い。特撮に頼らない恐怖を生み出す表情でした。
また同様に霧、コウモリ、狼などにも変身できるようですが、変身過程はありません。狼のシーンなどは、ジョンがバルコニーから覗きこんで「四足の獣が入って行きます!」ですから、恐るべし演出でした。(^^;
こういう演出は最後にもあって、棺に眠るドラキュラを倒すときには、その直前でジョンとミナの方へカメラが移動してしまうので、杭を打つ音、うめき声しか聞こえません。いまどきの映画に慣れている人には満足できないでしょうね。
しかし…観ていてもっとも印象のあった人物は、ドラキュラの僕と成り下がってしまったレンフィールドでしょうか。
この狂気振りは、当分忘れられない怪演でした。
実際に当時の傑作には違いありませんが、今鑑賞すると、やはり謎なストーリーや解釈が多くて、個人的には好きな作品でもあるのですが、評価としては★2つとしました。
【ここがいい!】
・やはり、ベラ・ルゴシの風格でしょうか。ここまでアップに耐えれる人はそうはいないでしょうし、かなりの恐怖です。
・煙草入れに付いているカガミを叩き落す瞬間から、冷静さを取り戻すまでがいいですね。
【ここは問題かな?】
・三人の花嫁もちゃんと登場したのはいいのですが、いったいどうなってしまったのやら。ひょっとしてトランシルヴァニアでお留守番?(^^;
・レンフィールドの行動があまりにもバカすぎます。このバカがいなかったら伯爵も…。
・原点であるせいか、彼氏の行動や女中の行動が…。
・えっ、ここで終り?っていうラスト。(^^;
【一言いいたいコーナー】
・ドラキュラ城にはコウモリのほかに、なんとアルマジロなども住んでいました。なんでも監督が無理やりシーンに入れたようですが、怖いと言うよりも驚き、次の瞬間には吹き出してしまいました。(^^;
・ニンニクではなく、トリカブト…。
・ヴァン・ヘルシング教授は最後に「まだやることがある」と寺院(?)に残ってジョンたちを逃がすのですが、その逃げ出すシーンで映画は終わりを向かえてしまいます。教授…いったい何をしていたのでしょうか。
・吸血鬼モノでは日光を浴び灰になるのが定番ですが、本作では時間に縛られているようで…即ち日中という時間帯は動けないという事で、ラストの修道院地下では暗いにも関わらず動けません。
なのでちょっと、あっけなかったかな。
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